家庭用真空パック機として実に多くの機種が販売されています。あまりに多くの種類があり、価格もピンキリです。
いったい何を基準に選べばいいかわからない・・・
はじめての真空パック機選びで、まず最初に理解すべきは脱気(空気を抜いて真空にする)方法の違い。
家庭用の真空パック機には、そのしくみの違いにより大きく分けて3つの方式があります。3つの方式とは「脱気溝式」「ノズル式」「チャンバー式」です。この違いを車で言えば、乗用車かミニバンか四駆のSUVを買うのかくらいの差があります。
この記事では、これら真空パック機の代表的な3つの方式について、仕組みの違いと特徴を詳しく解説します。違いを理解して予算と用途に適した機種を見つけましょう。
脱気溝式
家庭用真空パック機として最も製品数が多いのがこのタイプ。
ナイロンポリ袋の開口部全体をくわえ込んで袋の空気を吸いだす方式です。
脱気溝式の仕組み
本体には長細い溝(脱気溝)があり、溝の外周にはパッキンがついています。溝の部分にナイロンポリ袋の口の部分を差し込むようにセットして、本体のふたを閉じます。溝の内部の空気を吸いだすことにより、差し込まれたナイロンポリ袋の内部の空気を吸引する仕組みです。吸引が完了すると溝の手前のヒーターで密封して真空パックが完成します。
※写真はフードセーバーの説明ページから引用
このタイプは仕組み上、内側にエンボス加工という特殊な加工を施した袋が必要。
袋の内側全体に微小な突起をつける加工で、袋の内側を触るとざらざらしています。この加工により、空気を吸引した際に袋同士が密着することがなくなり、空気を吸すみずみまで吸引しやすくなります。
脱気溝のパッキンで挟まれた部分も、エンボスのおかげで微小な隙間が残ります。脱気溝内の空気を吸引すると、この微小な隙間を通って空気が袋から脱気溝に移動。袋内を真空状態にすることができます。
脱気溝式のメリット・デメリット
- 誰にでも簡単に扱えて失敗が少ないため、一般家庭用のツールとして最適
- 様々なデザインの機種が販売されており、商品選択の幅が広い
- 可動部がないため、比較的コンパクトなサイズの製品が多い
- 他方式と比較して構造が簡便であり、低価格帯から商品をwそ選択可能(数千円~)
- エンボス加工された専用の袋やロールを購入する必要があり、ランニングコストが高め
ノズル式
「専用袋不要」と謳われていることの多い製品がこのタイプ。
ノズル式の仕組み
ナイロンポリ袋の開口部にストロー状の吸引ノズルを差し込んだ状態で本体の蓋を閉じ、袋の口全体を圧迫します。吸引ノズルから空気を吸い込んで袋内の空気を吸いだす仕組みです。吸引が完了するとノズルを引っ込め、ヒーターで密封して真空パックが完成します。
※FoodSheld販売元Genetech G.K.の説明動画より引用
ノズル式のメリット・デメリット
- 比較的安価な汎用のナイロンポリ袋が使用できるため、ランニングコストが低い
- 汎用ナイロンポリ袋は様々な大きさの製品が市販されている。特に小さなもの(お饅頭など)をパックしたい場合に適切なサイズの袋が利用できる。
- うまく空気を抜くのにコツが必要
エンボス加工の無い袋を使用するため、内容物とノズルの位置が離れていると袋の表裏が張り付いてしまいうまく空気が吸えなくなる。上手く空気を抜ききるには、内容物をノズルの近くに寄せる、ノズルの部分にしわを作り空気の通り道を確保するといったコツが必要。 - エンボス加工した袋は使えない
エンボス加工された袋を使用するとノズルの部分以外から空気が侵入してしまい、うまく真空にすることができない。 - 脱気溝式と比較して高価
後述するチャンバー式ほどではないものの、ノズルの稼働機構もあるため比較的高価(1.2万円~3万円)
チャンバー式
プロ仕様の真空パック機と同じ原理で、高い真空度を実現できるのかこのタイプ。
チャンバー式の仕組み
内容物を入れた袋を袋ごと密閉された箱(チャンバー)の中に入れ、チャンバー内の空気を抜きます。チャンバー内が真空になったら、チャンバー内で袋の口を溶着します。チャンバー内に空気を戻して、作成した真空パックを取り出します。
※Wevac公式ページから画像を引用
チャンバー式のメリット・デメリット
- 真空度が高い
袋の口から空気を吸いだすのではなく、チャンバー内を真空にして、真空のチャンバー内で袋の口を圧着するため、空気の吸い残しが発生しない。
- 本体のサイズが大きい
袋全体を格納するチャンバーを機械の内部に持つ必要があるため、本体のサイズが大きい。電子レンジほどの大きさがあるため、一般家庭のキッチンでは置き場に困る。 - 本体価格が高い
他方式と比べると高価格帯(5.5万~)
その他の方式
基本的な方式としては上述の3方式がメジャーな方式となるが、本体の形状として特徴的な製品も存在する。この章ではそれらについて紹介します。
ハンディ式
バッテリで動作するタイプの真空パック機。手で持って使用するため、とてもコンパクト。
本体にヒートシール機構を持たないハンディー式真空パック機
逆止弁のついた専用の真空袋やキャニスタータイプの真空保存容器を使用するタイプ。
逆止弁とは、袋の中から外へは空気が流れるが、その逆には流れない仕組みの弁のこと。掃除機で空気を吸いだす布団圧縮袋と同じ仕組みのバッグです。掃除機の代わりにバッテリで動作するポンプを使用して空気を抜きます。
袋の口を溶着するヒートシールド機構を持たないため、本体が非常に小型で、使用方法も簡単。
ただし、逆止弁付きの専用袋が必要であり、再利用はできるものの、専用袋やキャニスターがないと使用できません。
バッテリで動作する脱気溝式の真空パック機
小型の脱気溝式の真空パック機で、コンセントではなく内臓バッテリで動作するタイプ。
脱気溝式の一種ですが、ケーブルレスのため、非常に手軽に使えるのが特徴。
まとめ
家庭用真空パック機は、大きく分けて「脱気溝式」「ノズル式」「チャンバー式」の3つの方式があり、それぞれに特長や適した用途があります。
脱気溝式は、最も一般的なタイプで、操作が簡単で失敗が少ないため、家庭での使用に適しています。ただし、専用のエンボス加工袋が必要なため、ランニングコストはやや高めです。
ノズル式は、汎用のナイロンポリ袋が使えるためランニングコストを抑えられるのが魅力です。ただし、空気を抜くコツが必要で、慣れないと最適な真空状態を作るのが難しい場合があります。
チャンバー式は、業務用レベルの真空度を実現でき、食材の鮮度を最大限に保つことができます。しかし、本体が大きく、高価なため、一般家庭での導入にはハードルが高い点もあります。
また、ハンディ式やバッテリ駆動型の脱気溝式などのコンパクトなモデルも存在し、用途に応じた選択肢が広がっています。これらは手軽に使える一方で、専用袋の必要性や吸引力の限界といった制約もあります。
真空パック機を選ぶ際には、「使用目的」「収納スペース」「ランニングコスト」「操作のしやすさ」などを考慮することが重要です。家庭で手軽に食材の鮮度を長持ちさせたい場合は吸引溝式、コストを抑えたい場合はノズル式、業務用レベルの真空保存を求めるならチャンバー式が適しているでしょう。
自分のライフスタイルや保存したい食品の種類に合わせて、最適な真空パック機を選び、賢く活用していきましょう。